2023年 04月 30日
宮島未奈(著)「成瀬は天下を取りにいく」を読了。
少し前にラジオで作者の宮島氏がゲストで出ていたものをたまたま聞いていて
読みたいなと思っていたところに、地元の先輩が誕生日にと送ってくれました(ありがとうございます!)。
いやー読み始めからすぐに引きこまれて、すごく面白かった!
そして、最後は少し涙ぐんでしまった。
成瀬の台詞
「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」から始まる物語。
私は滋賀県出身ですが、大津市の出身ではないので西武大津店への思い入れは薄く、
当時閉店したことは知った時、そこまでの喪失感はなかったです。
それでもやはりいくつかの西武大津店での記憶はあり、物語を読んでいて
「小学校の卒業式の洋服を買いに行ったなぁ」とか「LOFT行ったなぁ」とか色々思い出しました。
この本を読まなかったら、それらの記憶を思い出すこともなかったかも・・。
「新しい何かに挑戦してみよう」と思い立つことはあるけれど、思い立つことと実際に行動することは全然違う。
成瀬の思い立つ挑戦内容の発想力そのものも素晴らしいけれど、それを即、行動するところに惹かれます。
そんな成瀬に振り回されながらもなんやかや楽しんでもいる親友の島崎も愛おしい。
6つの短編が連作となっており、それぞれ語り手が異なることで
それぞれの短編での語り手が思っている自己認識と、他の人から見た人物像に
新鮮な差があり、読んでいてより深くその人を知ることが出来る喜びがありました。
この6編の中で「線がつながる」という話が、自分の学生時代のクラスでの人間関係の構築への疲労感を思い出し、胸がギュッとなる。
どうしても他人がどう思うかと考えて、そうなりたくても、やりたくても行動出来ないことの方が多い。
誰もが成瀬や島崎になれるわけではないからさ・・とかなんとか言い訳を・・。
それでも自分の中に、少しは成瀬を宿したいと思いました。
ちなみに、西武グループの創業者の堤氏が滋賀県出身なので西武と滋賀はゆかりが深いのですが、ひょっとしたら、というかおそらく、滋賀県民以外にはあまり知られていないかもしれませんね・・。
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by lender
| 2023-04-30 20:56